受験生になると、模試や実力テスト、過去問演習など、入試を見据えた問題を解く機会が増えていきます。これらを解き終わった後は、できなかった問題を見直し、理解を深める「解き直し」が欠かせません。解き直しを通じて、自分ができていなかったことを明確にし、同じミスを繰り返さないための改善策を講じることが、着実な成績向上につながります。

このような解き直しは、算数・理科・社会では当たり前のように行われています。ところが、国語になると、多くの受験生がやりっぱなしにしてしまうのです。しかし、国語も他の教科と同様に、解き直しは非常に有効です。たとえば、語彙や漢字、文法などの知識問題であれば、間違えた箇所を確認して知識を補えばよいでしょう。一方で、読解問題の場合は、解き直しの意味合いがまったく異なります。答えを覚えても意味がなく、それでは別の問題に共通性を見出せないので、正解にたどり着くことはできません。読解問題では、「なぜその答えになるのか」「どのように読めばよかったのか」をしっかり振り返ることが重要なのです。

① 答え合わせよりも、解答プロセスの再現

読解問題、特に記述や選択肢では、「なんとなくこれかなと思って書いたら当たった」、「勘で選んだ選択肢が正解だった」という経験をお持ちの方も多いでしょう。ところが、これは危うい状態です。
いくら答えが正解だったからといって、それだけで安心してはいけません。勘や偶然の正解は、次回の問題で必ず再現できるとは限らず、安定した力にはなりません。根拠に基づく理解を持つことが必要です。

なぜ正解だったのか。なぜ誤答だったのか。その根拠を自分で説明できる状態になって、初めて「できるようになった」と言えます。国語の読解問題において、答え合わせだけしても、問題を解く力(理解力や思考力)が身についていない状態なので、答え合わせだけで終わる学習は、極めて不安定で再現性に乏しい学習です。

国語の点数が安定しないお子さんの多くは、なぜその答えになるのか?という分析が足りていません。「なぜその選択肢を選んだのか?」、「記述に用いた根拠は、どこにあったのか?」という視点を持たずに、正誤だけを見て先へ進んでしまっているのです。

② 難問に強い子は何が違うのか?

国語は感覚で解ける問題もありますが、難問になればなるほどその過程が重要です。
設問の意図を捉え、本文中のどこに注目すべきかを判断し、必要な内容を正確に拾い、選び取る。こうした思考の手順を身につけることが、読解力向上の肝となります。単なる結果の正誤だけでなく、過程に意識を向けることが不可欠なのです。

ですから、読解問題こそ「解き直し」が重要なのです。間違えた問題は特に、その答えに至るプロセスを振り返り、どうしたら次につながるかを考える必要があります。

特に、記述問題では「何を書いたか」よりも「なぜそう書いたか」が重要です。本文のどの部分を根拠に、どんな言葉を選び、どう論理をつなげたのか。そうしたプロセスを自覚できて初めて、記述力は安定していきます。

③ 正答・誤答の理由を言語化する力

「なぜその答えになったのか」を問い直すことは非常に大切で、それは、正答にも誤答にも「理由」があるからです。言語化することで思考が整理され、同じ過ちを繰り返さず、正しい理解が定着していきます。たまたま当たった正解も、偶然書いた記述も、なぜそうなったのかを本人が言葉にできなければ、力にはなりません。

逆に、なぜ間違えたのかを正しく把握し、どこで判断を誤ったかを振り返ることができれば、それだけで次につながります。文章中のどの文を見落としたか、設問の条件をどのように読み違えたかを明確にすることで、読解の精度は上がっていきます。

④ 読解力は積み上げるもの

国語は他教科と違って、勉強の成果が見えにくい、という声もよく耳にします。たしかに、「できるようになった」という実感を持ちにくい面はあるかもしれません。

しかし、ただ問題を漫然と読んで解くのではなく、毎回の問題に真剣に向き合い、読み方や考え方の改善点を見つけていく積み重ねが、やがて力となって表れます。

模試や実力テストでは、成績の上下はつきものですが、大切なのは「平均して右肩上がりになっているかどうか」。一時的な変動に一喜一憂してしまうよりも、継続的な取り組みを通じて少しずつ成長していくものだという認識を持つことが必要です。

国語も積み上げ型の教科と考えています。どこを読むべきだったのか、どう考えるべきだったのかといったことを試行錯誤しながら身につけていけば成長します。

そのためには、「できなかった問題」こそ、解き直すことです。ただの失点ととらえるのではなく、間違えてしまったというその悔しい気持ちを前に進む力にするべきです。どこで読み違えたのか、どの言葉を見落としたのか。それを一つずつ明らかにしていきましょう。

⑤ その場限りの得点よりも、再現性を意識しよう

入試本番で求められるのは、目の前の文章を初見で正確に読み取り、的確に答える力です。そのためには、過去の演習を「その場限り」にせず、「次にどう活かすか」という視点で見直す姿勢が欠かせません。

「解き直しをていねいに行い、考え方の筋道を見直す」ことを繰り返すことで、着実に力を積み上げる意識が重要です。

まずは、今日の演習から「解き直し」を始めてみてください。