ある日のオンライン授業の終わり、生徒が私に尋ねました。

「先生、このニュースって本当ですか?」

画面を確認すると、そこには、切り取られた発言とセンセーショナルな見出しが並んでいました。

「読んでみて、どう思った?」と、私が問いかけると、

少し考えたあと、生徒はこう答えました。

「なんか……この人が本当に言ったことじゃない気がします。話がちょっと大げさになってるような……」

画面の向こうで、言葉をひとつずつ確かめるようにしている姿が印象的でした。

情報が溢れる時代に、なぜ読解力が必要なのか

現代は、情報が溢れかえる時代です。SNS、ニュースアプリ、動画のコメント欄等々、日々、膨大な言葉と情報に晒されています。

しかし、その中には誤った情報や極端な意見、さらに誰かを傷つける言葉や誹謗中傷する言葉も少なくありません。実際、こうした問題はたびたび話題にもなっています。

こうした状況だからこそ、「読解力」が大切になります。

文字を追うだけでなく、「この文章は何を伝えようとしているのか」「どんな立場から書かれているのか」「どこまでが事実で、どこからが意見なのか」等、そうした問いを立てながら読む力が、情報に流されず自分の頭で考える力を育てます。

一方、読解力が未熟なまま情報に触れ続けることは、かえって誤解や偏見を深めてしまう危うさもはらんでいます。

たとえば、断片的な言葉だけを切り取り「わかったつもり」になることや、極端な意見に引き寄せられてしまうこともあるでしょう。

そのため、読むことで“立ち止まり考える”という主体的な習慣を身につけてほしいものです。

それは、情報に振り回されるのではなく、情報と対話しながら自分の軸を育てていく営みでもあります。

読解力は、すべての学びの“根っこ”になる

OECDのPISA調査では、日本の15歳の読解力は年々低下傾向にあり、特に「情報を探し出して理解する力」「得た情報の質や信ぴょう性を評価する力」「矛盾を見つけて対処する力」に課題があると指摘されています。

こうした力は、国語だけにとどまりません。 算数の文章題、理科の実験レポート、社会の資料読み取り等、どの教科も「読むこと」から始まります。読解力は、学力全体を支える“根っこ”のような存在なのです。

※…文部科学省・国立教育政策研究所「OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント」https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/01_point.pdf?utm_source=copilot.com

当塾の実践:「100字要約」で育てる“読解力”

そこで、当塾では入塾後のおよそ半年~1年間に、「100字要約」の指導を重点的に行っています。これはオリジナル教材を用いて、段落ごとに要点を整理し、筆者の主張を100字以内でまとめるという演習です。

この取り組みには、いくつかの意図があります。

文章の構造を俯瞰して捉える
文章全体を段落ごとに整理し、どこが説明で、どこが主張なのかを押さえながら読むことで、内容の理解を深める。この力が育つと、長文でも要点が捉えやすくなり、さらに入試問題でも問われる「段落構成」「要旨」「筆者の意図」に強くなる。  

物事の本質を見抜く
筆者が本当に伝えたい核心部分を読み取る力をつけることで、言葉の奥にある意図や価値観、立場を読み解けるようになる。この力が育つと、情報に振り回されず自分の判断軸を持つことができる。  

自分の言葉で再構成する
要点を抜き出して終わるのではなく、内容を理解した上でまとめ直すことで、理解の定着や自らの思考の表現へとつながる。この力が育つと、記述問題などのアウトプットにも強くなる。

たとえば、ある生徒は最初、「全部大事に思えて削れない」と悩んでいました。

しかし、回を重ねるごとに「この一文が核だ」と気づけるようになり、やがて「筆者の立場はここに表れている」と、視点を持って読むようになりました。

この生徒の変化は、単に“要約が上手になった”というだけの話ではありません。

読むことが、受け身の行為から能動的な思考へと変わっていく——その過程にこそ、大きな意味があると考えています。

読解力が育つと変わっていく

読解力が育つことで、文章をただ受け取るだけでなく、自分なりに整理し、考え、判断しようとするようになります。

実際に、最初は「何を書けばよいかわからない」と手が止まっていた生徒が、まずは自分の考えを書いてみようとするようになったり、本文を根拠にして説明しようとする姿勢が見られるようになったりと、少しずつ変化が現れてきます。

こうした変化は、単に問題が解けるようになるというだけではありません。
読むことを通して、自分の頭で考え、判断する力が育っていく過程だと考えています。

情報があふれる時代だからこそ、読解力は自分の頭で考えるためにも必要です。
受験という機会を通して、受験の先まで役に立つ読解力を育てていきませんか。